境界を超えテクノロジー同士を統合する際の要

第八章 テクノジーとイノベーションを体現できる未来型「組織」

イノベーションをビジネス化していく際、経営者の役割を紐解いていきます。大きくは、イノベーションの「質」のチェックと、全体の「方向性」チェックです。

経営者自身の仕事は、イノベーションの先頭を走り、イノベーションをビジネス化していくプロセス全体の質を高め、速度を速めることです。重要なことは、何がどうなれば次のステップに行くか、その継ぎ目の見極めです。何がどうなれば、その結節点同士が繋がるか、繋げられるかです。すべてのプロセスに事細かに携わることは非効率ですので、ポイントは、「何がどうなったら意志決定するか」現場に伝わっているかでしょう。

(6–6.イノベーションの「節目」とビジネスの「節目」を結節させる)でお伝えした点と合わせ、ポイントは結節させようとする者同士が、間違っていないか「方向性」の最終確認です。生み出されるイノベーションの「質」が担保されていればよいですが、経営者自身がイノベーションの「質」をチェックすることが理想です。また、チーム全体が、情報収集1つとってもイノベーションの源泉となる「質」に重きを置く体制が出来上がってないと、場当たり的なイノベーションにアクセスし、そこと連携を始めようとしてしまいます。

典型例としては、イベントで偶々あった企業と始めてしまうことです。いざ始めてから、それよりもいい技術を持った企業を知り、右往左往しまう。提携のしやすさから、日本のイベントでプッシュされてきている企業と始めてしまう。こうした企業との提携では、その会社にとってベストなイノベーションの「芽」へアクセスは、まず、できていません。自社が何も動かず売り込みにくる案件で自社の戦略に合致する企業は、まず、ありません。こちらからアプローチしていく企業がベストです。いずれにしろ、組織として、プロセスの「どこへ」リソースを当てるか共通理解が浸透しているかが「要」です。業種によって当然異なるでしょう。

現代のビジネス環境では、「環境に適応すること」と「環境を変えてしまうこと」両軸の発想が必要な時代です。経営者としては、イノベーションを通じビジネス化していく際に自社がとる意思決定を読み間違いたくないのが、本音でしょう。そのイノベーションを構成するテクノジーを見る際には、2 種類の視点が必要です。1 つは、1 つ 1 つのテクノロジー自体の目利き。各分野それぞれに存在します。もう1 つは、テクノロジーを横断的に見ることです。

時代変化を読むことが難しい理由は、テクノロジー同士が、領域を超えて関係します。そのため 1 つ 1 つ深くテクノロジーを見つつも、境界を超え技術同士を統合する際に異なる意見が出た場合、経営者は何を拠り所に判断するかが重要です。異なる意見を取りまとめる必要があります。イノベーションの際、どちらのテクノロジーを選ぶか。あることを成し遂げようとする際に、1 つ 1 つの技術を統合し、どう価値を発揮するかを見定める能力が必要とされます。正解はないことが多いです。本質がわかっていないと判断は不能ですし、本質的なところの「解」は経営者しか持ち合わせていないでしょう。

歴史的に見ても、必ずしも優れたテクノロジーが普及してきたわけではありませんし、現代では、個々のテクノロジーで打開できることは少ない実情があります。1 つ 1 つのテクノロジーをどう組み合わせ「新結合=イノベーション」を生み出し、勝負していく時代であり、それがイノベーションです。経営者の役割は、1 つ 1 つの可能性が低い組み合わせを減らすことでしょう。イノベーションの質のチェック、そのイノベーションが与えるインパクトの見極めと、合わせその進んでいる方向性のチェックを同時に行う必要があります。これは書くことは容易ですが、実際はかなり難易度が高いでしょう。

--

--