3つのプロセスで成果を上げるためには1つでも引き出しを多く持つ
第三章 イノベーションをどうビジネスにつなげていくのか
3 つのプロセスについて、個別であるようで、繋がっていることについてお話してきました。さて、最後は、「 1 つでも多くイノベーションへのアクセス」があったほうがいいというお話です。現在解決できていない課題難題は、1 つのテクノジーだけでなく、テクノロジーの組み合わせが契機となっていきます。
「カプセル型内視鏡」の事例を見てみましょう。口から入れる内視鏡カメラでは、「胃」以降への消化器官へのアクセスに限界があります。1981 年、イスラエル国防省の軍事技術研究機関でカメラ付きミサイルの開発に携わっていたイダン氏が、たまたま消化器内科医と出会い、議論を交わしていく中で、アイデアとしてでてきたのが、カプセル型内視鏡の発想に結びつきます。ただ、発想だけでは、実現できませんでした。着想の実現は、1990 年代に入ってからです。「 CMOS イメージセンサー」「 ASIC 無線送信機」「白色 LED 」の 3 つの新技術の登場により、実現に至ります。
イノベーションのニーズに対して、テクノロジーを組み合わせて可能性を検討していけるかという、泥臭い作業が突破口になります。ニーズだけでは、イノベーションは起こりません。テクノロジーをただ組み合わせるだけでも、ニーズにフィットしないと、ビジネス化できません。テクノジーの組み合わせでニーズに対してイノベーションを創造できるかが、勝負でしょう。
自社の技術ポートフォリオや、大きい方向性がある領域に関しては、何でもかんでも集めるというわけにはいきません。ただ、一方で、自分たちと関係しないようなものこそ、集める必要があります。関係するかどうかは集めているときは大抵わかりません。そのためには、目利きを活用して、イノベーションの芽を 1 つでも多く集め、その 1 つ 1 つを効果的に組み合わせていけるかでしょう。
誰もが思いつきそうな課題や組み合わせであれば、すぐに実現できます。今、解決できていない課題に対して、いきなり新しいものは「ポン」と生まれてきません。社内では全く出てこないアプローチに価値がある理由です。そのアプローチ(組み合わせ)をできるだけ多く持っておくことに越したことありません。
イノベーションでも、俗にいう破壊的イノベーションと言われるものの多くは、早熟のスタートアップによってもたらされます。第一章でもふれたように、このイノベーションを興すサイクルの「速さ」がイスラエルであります。第四章では、実際そのイスラエルとどう関わっていくのか、実情に即した形でお伝えして参ります。