2050 年までにぶつかる課題への本質的な課題に向けた人事

第五章 未来においてテクノロジーがどう作用するか

第五章からは、未来のお話です。2021 年の現在、私は 40 歳ですが、 30 年後に 2050 年を迎えます。30 年前は、私は小学校三年生です。30 年前は、イスラエルが中東のシリコンバレーになり始めの時期であり、時間の流れを犇々(ひしひし)と感じます。現在、私たち社会は多くの課題を抱えています。世界に目を向ければ、地球温暖化、環境破壊、テロ・戦争、感染症など、従来の国境という概念やテクノロジーでは打開できない問題が山積しています。実際、長期の課題解決は、現段階では、無理難題の集積です。

企業経営にあたっては、社会課題に向けてかじ取りを行う必要があります。長期目標達成に対し、企業の短期、中長期の目標をどう関連付けていくかに直面しています。中長期のビジョンの重要性を訴えても、現実は、中長期ビジョンを実現できる組織設計になっていません。現在の評価に重きが置かれ、未来の評価(成果)を図る術を持たない企業が多いことが実態です。これはイノベーションをビジネス化していく際の中長期の評価が必要とされる問題にも似ております。

中長期の目標を掲げ、組織としてイノベーションを興す能力をどう兼ね備えていくかは、経営上大きな課題です。ビジョンはあれど、ビジョンに対しての目標設定、評価が、実際できている企業はほとんどないのではないでしょうか。未来への評価そのものが難しいこともあり、目標設定は短期で設定されやすい傾向です。結果として、現場だけでなく、組織としても、短期目線の成果へ比重が偏ってきます。中長期の目標を定めたところで、成果を図りようがありません。そのため、中長期ビジョンが空しく聞こえる企業は少なくなりません。中長期ビジョンを掲げたところで、評価制度が、短期目線でしか評価できないインセンティブ設計では何ら意味はなく、中長期、短期目線の両軸での評価が必要でしょう。

「テクノロジー」や「イノベーション」をビジネス化していくことは、R & D などが含まれると、3年以上かかる中長期目線が必要とされます。ところが、経営者が変わると経営方針が変わります。そうすると、テクノロジーやイノベーションをビジネス化していくに関する方針も大きく変わってしまいます。社長交代にはつきものです。評価制度の設計自体を、より難しくしています。例えば、1~2年で結果がでない事案を評価対象とした場合、評価自体は難しくなります。理想として頭ではわかっているのですが、企業自体の長期的な戦略実行体制に関しては、経営者が変わっても、ある程度方向性が変わらないことがベストでしょう。いざ実現しようとすると難しいでかもしれません。

まず何に着手すればいいか。どうしてもオープンイノベーションという文脈になると「外」に比重を置きがちです。目利き( 3–3.イノベーションへのアクセスを効果的に進める「目利き」)の部分でもふれたとおり、まず、自社自身「内」を変容する必要があります。1つは、人事制度です。

人事にテクノロジーがわかる人材は、どれだけいるでしょうか。人事に起業家出身の方はいるでしょうか。技術戦略、イノベーション戦略をどれだけ構築したとしても、それに伴った人材転換の流動性に欠く人事戦略、イノベーションをビジネス化していくことが評価されない制度では、そういう組織にはなりえません。「テクノロジー」や「イノベーション」に精通する経営者が、人事権を持っていればいいという話ではありません。組織としてそういう体制になっているかということです。

優れた人材が揃っていても、人間である以上、どうしても目先の評価に左右されます。イノベーションをビジネス化していくというプロセスにおいては、場当たり的な人事になりやすいことは、最大のデメリットかもしれません。こうした課題を解決したと上でないと、すべてのプロセスはうまく機能しないでしょう。

2050 年までにぶつかる多くの課題と対峙し、外部とのテクノロジー、外部との連携により自社が目論むイノベーションを始める必要があります。自社の R & D 部門、事業部門等、部署間で統合できるような人材はもちろん、人事制度が求められていると思います。人事の責任者に、テクノロジーを全方向的に見られて、起業家出身者の責任者を置くことを真剣に考えた方がいいかもしれません。

少子高齢化は、この国にとってはチャンスです。新興国で人口が増えることと日本の課題とは大きく異なります。そうした様々な課題が起こっていく「未来」においてテクノロジーが果たす役割を記していきたいと思います。

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