駐在員を置くか否かなど、本質的な問いへの対処
第四章 イスラエルのイノベーションと関わる際の勘所
課題を解決する前に、「ノウハウを得れば、打開できること」「ノウハウを得ても、打開までに、時間がかかること」に分け整理します。ある程度経験すれば、対応可能なことと、人材育成や組織化など、一定( 2 年)以上の時間をかけないと打開できないものとに分けます。いざやると決めたら進むだけです。まず、イスラエルとビジネスする際に悩む「駐在員を置くか否か」。自社ですべてできないために「外部ネットワーク」をどう使うか否かです。
■駐在員を置くか否か
イノベーションをビジネス化していく際は、「テクノロジー」と「イノベーション」と「経営」に関わる課題を解決していける人が求められます。これは、駐在員であっても変わりません。駐在員は、少なくとも CTO 直轄、新規事業担当役員の決裁者と同等レベルで、技術、事業、経営目線で判断できることがスキルを持った人材が望ましいでしょう。主な理由としては、スタートアップとのミーティングで求められる主なことは下記で、こうしたスキルセットがないとそもそも相手にされません。
〇スタートアップとの協業で求められること(一例)
技術目線:技術成熟度の目利き(技術の本質的な見極め)、自社が必要とする技術ポートフォリオに基づいた目利き
事業目線:PoCやる際の予算執行権、プロジェクト管理、本社調整
経営目線:意志決定する根拠立て、失敗した時のダメージ、全社へ与えるインパクト
併せて、それを実行できるコミュニケーションスキルが求められます。たとえば駐在員をいざ置くと決めます。事前に行く際に、管掌役員の権限を委譲するべく模索しようしますが、結果的に駐在員を置かずに、現地パートナーなどを通じ、CTO や経営トップレベルが直接コミュニケーションをとったほうが、ビジネスディールが大きく、早く動いていくような状況であれば、駐在員を置く価値は低くなります。
実際、A 社の場合は、そもそもこのレベルの人材を駐在させることは、実質不可能と判断し、駐在員を置かずに、活動しています。適切な速度で意志決定できない駐在員を置くなら、日本から意志決定したほうがいい。と判断し、実際は、それ相応の能力を持った人が、現地と日本を行ったり来たりしています。もし人材育成をしたいのであれば、話は変わってきます。いずれにしろ、「本当に駐在は必要か」というところまで視点が落ちてくるレベルまで、掘り下げましょう。私達が成し遂げようとする根幹は、イノベーションをビジネス化していくことですが、それをどう成し遂げるか、企業によって考え方は異なるでしょう。
また、外部ネットワークに関しては、1–3.EXIT が生む VC 離れ でもお伝えした通り、「ベンチャーキャピタルが関わらない案件が増えているにも関わらず、彼らと関わるだけでよいのか」「そうした環境下で、ベンチャーキャピタルへ出資すれば、一定程度のまとまった情報が手に入りやすい。ただ、それだけ自社のターゲットする情報を網羅し切れているのか」「特定のイスラエルのスタートアップへ投資するだけでよいのか」「外部専門家と付き合ったほうがいいのか、メリットとデメリットは何か」など、本質的な問いはいくつかあり、自社の目的に応じた答えを持っておくことは、必要でしょう。