追随(キャッチアップ)型と主導(リーダーシップ)型
第六章 イスラエルとなぜ関わり続ける必要があるのか
次に降りかかる問題は、1 つ 1 つのイノベーションを実現できたとしても、それ以上に難しいことは、事業環境や社会に影響を与える普及スピードが読みにくいことです。スマホの普及率(1–4. 変化の兆し、実態をどう掴むのか)でもふれたとおり、変化スピードの指標である、「普及率」の指標を得られるポジションにいないと、変化を察知できません。変化に近いところにいることが理想です。
そうなると、自分たちが今後注力していく領域では、いわゆる特定のイノベーションに対して、追随型ではなく、自分たちのビジョンを発信し、変化に対しリーダーシップを持って主導する側になっていくことが適切でしょう。特定領域やテーマに付随した独自戦略を持ち特定のテクノロジー領域でリーダーシップを持って進めていくということです。
自社のビジョンから独自戦略を構築し、今後の方向性を定めた領域のイノベーションを主導していくと、「変化」に近いところに入れる環境を自社主導でつくることができます。また、「エコシステムを主導するような、変化を作り出す側に立てるか」でふれたエコシステムを主導する際も、企業がもつ「独自戦略」がないと主導できません。「独自戦略」がないと、他社を追随するほかなくなります。「他社もやっているから、うちもやる」という追随の場合は、追いつくことはできても、その先に行くことはできません。
イスラエル人は、「独自の道」を進みます。他者への追随(キャッチアップ)は、日本や他地域でも十分できますので、イスラエルと関わることは、あまり向かないでしょう。「独自戦略」を考えている企業は、イスラエルとのシナジーは高いでしょう。新しい市場や市場が抱える難題に対して、独自のアプローチをとります。イスラエルには、新しいアプローチを必要とするグローバル企業の R & D が 400 程度ひしめき合っていることが何よりの証拠です。時代の流れを捉える側から、時代の流れを主導する側へ行くためには、本質的な課題解決を得意とするイスラエル人と、協働しない手はないと世界中のグローバル企業が考えています。
では、どう独自戦略を構築していくか。私たちの外部環境は、競合であれ、自社であれ、同じような情報が入ります。必要なことは、イノベーションの小さな「芽」を救い上げられる目利きです。目利きとは、「3–3.イノベーションへのアクセスを効果的に進める「目利き」」でもお伝えした通り、「自社にフィットする」「自社が強く必要としている」「私たちの技術ポートフォリオの穴を埋める」「自社でそこまでノウハウがない」などを組み合わせた独自視点のことです。