粒度の低い、浅い分析情報は目利きを狂わせる

第三章 イノベーションをどうビジネスにつなげていくのか

3 プロセスの最初のプロセスは、重要です。ただ、後者 2 つのプロセスも、劣らず重要です。最初のプロセスは、冷静に広い視野で「質」と「量」とそれに「鮮度」を判断する視点を持ち、分解すれば騙されることはありません。ただ、残念ながら、浅い情報が多いことも時代の特徴です。浅い情報(自社がしっかり判断し動けるレベルでの具体的な情報を提供していない)が周辺に多いことは、判断を狂わせ、時間を浪費し、結果として、ビジネス化にプラスになりません。

例えば、「イスラエルでは、コロナ禍でも投資が増えている」という情報は、断片的な情報を切り取った浅い情報です。投資でいえば、金額、件数の前年対比の数値を基準にすると、金額は確かに増えています。一方、件数は大きく減少していることがわかります。ご参照:[スタートアップ紹介Vol.50]NanoScent & コロナ渦スタートアップ概況/
私自身、統計情報は、条件反射し、分解してみる癖があります。分解すると、質問が生じます。コロナ禍でそもそも、投資が増えるということ自体、まず懐疑的に見ます。

「確かに、フォロー投資は増大しているが、ディール数は減少しています。なぜか?」
「総額は増加し、フォロー投資は増大している、シード、アーリーは減っているな…」
「ディール数の減少と合わせ、新規設立企業数も減少している。なぜか?」
「新規設立企業数の減少は、新規コミュニケーションの機会、頻度の減少ではないか、なぜか?」
「新規コミュニケーションの機会、頻度の減少は、新型コロナウィルス影響によりリアルでミーティングする機会そのものの減少が原因ではないか?」

「コロナ禍でも投資が増えている、イスラエル経済は好調である」のような記事は、具体性が乏しいです。自社がしっかり判断し動けるレベルでの具体的な情報にならないと意味がありません。浅い情報に時間を割くことは時間の無駄です。また、こうした表面的な情報の発信者は、本質を見ていないため注意が必要です。

まず、実情を確認します。新しい情報は、基本確認の連続です。本当にリアルミーティング(Face to Faceで会う)する機会が、減っているか。分解した事実と、個別にヒアリングしたこと「現地のスタートアップでは、 2020 年 2 月下旬以降新規のアポはほとんど取れない( 2020 年 4 月ヒアリング時点)」「ロックダウンが解除されるとアポがとりやすくなる」「現地のスタートアップで働く人に聞くと、基本すべてテレワークで行われている」「ただ、経営者などは、ロックダウン終了後一定程度出社を始めている」など、事実と相関させていけば、実態を伴った説得力が出てきます。

なお、実際「 2020 年スタートアップ投資が、ここ 5 年で最高数値の10.24B $ (約 1 兆円以上)へ達しました( 2020 年 12 月時点速報値)」であるという報道もあると、ますます判断が曇ります。

情報の捉え方が間違っていると、その後のアクションも間違えてしまいます。企業が考えるべきことは、本来は「新規コミュニケーション機会の著しい減少が起きている中で、新規投資動向は今後どうなるのか?」「投資動向が通常期のように戻るのは、いつか?」などであり、現在の事実、数値を読み解き、自社のアクションにつなげられるかどうかです。

具体策を考える企業にとって知りたいことは、「投資が増えているか、減っているか」より「なぜ、増えているか?その理由は?」であり、「なぜ、このコロナ禍でも投資が増えているか?マイナス要因はないか?」「このコロナ禍で、何が悪影響を受けている要因はないか?」「今後どうなるか?」といったことです。本来、企業はどうアクションをとるのがベストか、何を備えるべきか、その根拠の事実情報を集めることに主眼を置くべきです。結果として、それが目利きにも影響を与えてきます。

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Seiji (Steve) Kato
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Written by Seiji (Steve) Kato

Isratech.,Inc Founder & CEO Seiji (Steve) Kato URL : http://isratech.jp/

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