イスラエル短期目線の人材しか育たない制度設計にしていないか

第七章 日本とイスラエルの関係「深化」のために

今回は人材と組織制度のお話です。例えば、CVC 投資で、スタートアップに投資する場合は、自社の R&D(研究&開発)として使うことを考えることが専門書などでは指南されています。実態は、日本の CVC 投資は、ファイナンシャルリターン目線になりがちです。

R&D(研究&開発)目線を重視した CVC 投資は、イノベーションを獲得することを目的として、スタートアップに投資するようなことが必要だとはわかっています。ただ、頭ではわかっていながら、実際の投資実行は、ファイナンシャルリターンを求めない戦略投資目的と言いつつ、ファイナンシャルリターンを見込める案件に投資されています。この原因の一つは、2030 年、40 年を見据えたビジョンを掲げながら、評価は 3 年でしないといけない組織の評価制度に問題の根本があります。

CVC は成果とコスト、R&D はコストと考えがちですが、ただのコストセンターになってしまっては長続きしません。R&D 的な活動であっても、一定程度の財務面での厳格さがあれば、長続きしやすいでしょう。また、イノベーションの創造プロセスの戦略的な面において、事業部門が承認プロセスに入ってくる場合は、投資先との有機的な統合目線は不可欠でしょう。

これは、「イノベーションと自社がどう関わればベストか」にも関わってきます。既存の制度設計では、イノベーションをビジネス化していくことを考えて制度設計されていないため、組織構造の中で、どこまで柔軟な評価の仕組みを構築できるか、です。

例えば、イスラエルに駐在員を置く場合でも、駐在前、駐在中、駐在後、一気通貫するような評価制度になっていることが本来理想です。人事は絶えず変遷していきますが、変遷しても評価される仕組みを作る、駐在中に成果を出そうとすることは、短期目線になりがちです。組織の中で、個人がリスクをとるのみでインセンティブの働きにくい意志決定は、遠ざけられやすい傾向になってしまうでしょう。個人のスキルセットで、適切なイノベーションへアクセスはできるが、組織設計として、インセンティブが働く方法になっていないと、個人がアクセスしたイノベーションは、組織へ反映されにくくなり、独自戦略は空しく響いてしまいます。

いずれにしろ、個人の能力に依存するだけでは、組織としての積極果敢な意思決定は難しいでしょう。全プロセスを、駐在する一人の個人で対応するのは、基本的に不可能です。イノベーションを事業化するためにも、独自戦略の付加価値を強化し続ける制度設計が必要でしょう。