独自戦略の要諦
第六章 イスラエルとなぜ関わり続ける必要があるのか
「目利き」は、独自戦略の要になります。仮に、A 社とB 社とC 社で、同じ情報に触れた場合でも、「目利き」の仕方は、会社の数だけあります。独自戦略を持てば、「A 社が投資していれば、わが社も投資しよう」と従来考えていたようなことでも、一定の距離感が取れますので、その事実だけで安易に投資判断することは起こりにくくなります。そもそも、A 社とB 社の独自戦略が全く同じケースなど、ありえません。
「A 社が投資しているから、わが社も投資しよう」などという目線では、A 社に追随しているだけで変化を主導する立場には立てません。誰もが知っている情報を誰もが知らないような切り口で見ることが、独自戦略です。追随するだけでは、変化に置いていかれます。変化を生み出す側の視点がないと主導できません。社外のイノベーションと自社連携がうまくいかない理由は、外部目線でしかテクノロジーを見られなくなっているときです。自社の独自戦略に基づいた用途でみる目線がなくなっています。
買収当時、業界をざわつかせたグーグルの Waze 社の買収( 2012 年 10 億ドル程度で買収)ですが、当時、そこまで車両走行データ群に価値を置いている企業は、ありませんでした。独自戦略を構築する根幹は、世間が「すごい」と評価するより「自社にどのぐらい影響があるか」「自社の技術ポートフォリオ、事業ポートフォリオを強化するか」などです。市場の流れ、時代が発展する方向で語られる素晴らしいスタートアップであっても、「自社と本当にフィットしているか」目線で見ないと、意味がありません。無駄な投資、無駄な連携で終わります。
独自戦略を構築し、一般的にイノベーションと関わりはじめたところで一度困りだすと、経験不足から、独自戦略から考えずに、「社外といかに連携するか」のみを考えがちです。これだと、イノベーションをビジネス化していくときのハードルは大きくなります。最新の技術を持ってきても、社内に人材がおらず、人材をゼロから育てるようなことをやらないといけないことに、後から気付きます。人材を育てている間に環境が変わりますし、外部で起こるイノベーションに対峙した時に自社の人材がついてこられないと、イノベーションの速度がどうしても速まりません。現実的な方策としては、外部に引っ張られない中期経営計画をさらに速めるところで独自戦略を組み立てることが、一番理に適っています。
独自戦略を組み立てる時のポイントを書き出してみます。恐らく下記いずれか、もしくは複数に該当するはずです。
①競争力の強化
②新製品の開発
③R&D、イノベーションを興す能力の増強
④知的財産の開発
⑤新規市場へのアクセス
⑥イノベーションそのものへのアクセス
似て非なるものもありますが、上記に共通の活動もあれば、最初の一手から変わってくる場合もあるでしょう。独自戦略が構築できれば、独自の「目利き」するための判断軸は、つくられます。いずれにしろ、構築した独自戦略も、スローガンだけでは意味はなく、行動指針、評価基準に反映させて初めて機能し始めます。