失敗した後でもつき合える相手か
第二章 スタートアップとどう対峙していくか
私たちが立ち向かう領域は、困難が同居しています。その環境で、体裁がよい情報しか入ってこないうちは、警戒したほうがいいでしょう。逆説的ではありますが、マイナス情報(トラブルや問題)が日々入ってくるようになって、ようやく信頼されています。小さな問題が起こったときに、マイナス情報が入ってくることが重要で、その対処を適切にしておくことです。
何か事を起こす前段階から、失敗のことを考えておくことは抵抗があるかもしれません。ただ、失敗した後を見据えてのコミュニケーションをとると「3.回避可能」な失敗を回避しやすくなります。たとえば、スタートアップと提携する場合などは、パートナーシップの失敗を経験値として会社に取り込めるような関係性を作れる相手かどうか。こういう基準で見ると、彼らが自社と離れる正当性が低くなります。「失敗した後でも、この会社とは関わり続けたほうが得」と思ってもらえば、これ以上いいことはありません。
我々は、本当に関わり続けたい相手であれば、ここに「力点」を充てるべきでしょう。そうなると、自社の言いなりになるスタートアップや、世間で評価が高いスタートアップではなく、戦略的に合致するようなベストなスタートアップと協力する必要があります。そうでないと、そこまで力はかけられません。戦略的に合致した相手であれば、お金を持って逃げられるようなことは極度に減るでしょう。
「3.回避可能」失敗を回避する別のお話はいくつかあります。企業がとる技術戦略において、技術のキャッチアップ型、後追い型の投資では、どうしても回避が難しくなります。「後追い」という考え方では、主導権をとることが難しく、スタートアップにとって自社が魅力的に見えず、関係性が深まりません。それ以外にも、「何の価値もない中間業者に過度に依存しすぎない」「相手と相性(話が双方向か)がいいかどうか」「コミュニケーションや条件面の柔軟性、自社リソースを開放できる相手か」「将来的に自社が M & A できるポテンシャルを持った会社なのか」など、いくつか回避策はあるように思います。
イノベーションプロセス自体に、失敗はつきものです。「想定している失敗以上の失敗が起きたときに、どう対処するか」が、本来の仕事です。回避可能な失敗はできるだけ回避し、組織として、想定していない失敗が起きたときにどう対処するか、に力点を置きたいです。
失敗の問題の最後でお伝えすることは、失敗が起きたときは、詰問ではなく、質問にして対処していくことをお勧めします。「なぜ、起きたか?より、どうしてそうなったか?どうしたら、解決するのか?」をセットで報告するような文化にしてしまうと、起きた問題や失敗が「何」を理由にして起こったかがわかります。
仕組みが原因か、個人の問題か、失敗の起点がわかるだけでも、対処がしやすくなります。対処がしやすいということは、失敗への耐性がつくきっかけになります。組織文化にしていくには、個人としてどうするか、経営者としてどうするか、皆様の「失敗」に対しての問題認識は、少しは変わったという前提でお話を進めてまいります。