「回避可能」な失敗の回避方法
第二章 スタートアップとどう対峙していくか
たとえば、私の経験上のお話ですが、新しいスタートアップにアプローチをし、コミュニケーションをとった時に、方向性の議論にならずに、金額だけの話を始めてきたら、そのスタートアップはお金しか求めていません。これは、スタートアップと付き合うかどうかの視点にもなります。
経営者自身は必要ないかもしれませんが、いざ出資したら、少なくとも当事者は毎日(少なくとも毎週)のコミュニケーションが行われているかは指標の1つでしょう。日々のコミュニケーションができていないと、マイナス情報の収集は、まずできません。日々のコミュニケーションができておらず、「小さなマイナス情報」を得られ、ある程度のトラブルに対しては本音で言い合える関係性になっていないと、「大きなマイナス (体裁の悪い) の情報」は、仕組みを作ったところで、まず入ってきません。
「そんな毎日(毎週)連絡とっていられない」と思うかもしれない方は、本稿は、読み飛ばしてください。継続的にコミュニケーションを保っておく必要があります。頻度は多いほど、変化がわかるので、マイナス情報の察知は容易になります。問題が起こって当たり前の世界ですが、そもそも、問題が何か判明しないと対処しようがありません。
私たちが、日々入手できる情報は、極度に偏っている情報しか届いていないと認識する必要があります。投資する前後などは、特に要注意で、基本体裁の良い情報しか上がってきません。毎日向こうから連絡が来て困っているぐらいであれば、ちょうどいいでしょう。
さて、「失敗」についてお話してきた理由は、イノベーションを興すプロセスにおいては、(2–3. イノベーション、テクノロジーを全体感で見ること)の部分が、重要な「ツボ」となるからです。投資した後に、どう関係を作るかではなく、投資する前の段階からスタートアップとの最初の関係をどう作るか、組織構造の中でマイナス情報を早く入手できるか目線で捉えておく必要があります。
テクノロジーやイノベーションの源泉であるスタートアップとは、日々「信頼」をベースにしたコミュニケーションをとれる関係性が理想です。関係性を作れない相手への大きな投資は厳しいでしょう。
交渉段階でしっかりしたコミュニケーションをできるか。付き合う前に自分の価値を下げるようなことをいう人は言いません。投資をしてもらおうとする会社は、自社のマイナスのトラックレコードは言いません。特にイスラエルのスタートアップが以前の会社で失敗した理由は、ほとんど掴めません。交渉段階で、気になったのであれば、その理由を聞いてみることもお勧めします。明確な回答、こちらが納得するような回答が来る相手は、第一段階はクリアしたといっていいですし、曖昧な回答しか来ない相手は、どれだけよい技術やイノベーションを興せそうな会社であっても、警戒したほうがいいかもしれません。