「ラボ」と「ビジネスユニット」の統合目線
第三章 イノベーションをどうビジネスにつなげていくのか
「目利き」自体の速度を速める必要もあります。「じっくり見てみたい」「技術者にどういう技術か確認する」などの理由で、目利き自体に、3か月も4か月もかける企業があります。ベストは、スタートアップとミーティングする人が、目利きし、意志決定できることです。それもやはり、経営者自身が目利きできることがベストです。時間をかければいい目利きができると考える方は多いようですが、指標がはっきりしていれば、結果はすぐに判明します。テクノロジーによっては、細かな背景等は最前線の技術者が評価しないとわからないかもしれませんが、プロセス全体を通して、目利き自体に時間をかけることの価値は薄いです。速くするべきです。
どれだけ革新的なテクノロジーやイノベーションであっても、それ自体を自社の価値連鎖に巻き込めないと、ビジネス化できないためです。出現しつつある市場ニーズに新しいテクノジー、イノベーションを結び付ける必要があります。「いいものがあれば、ビジネス化できる」という固定観念に縛られていると目利きに比重を置きがちです。速度を速めるためには、一定基準を通過する技術であれば「2.各領域の最前線で自社が主導的な価値連鎖のポジションを構築、保持できる。3.イノベーションを価値連鎖に巻き込んだ、ビジネス化」のプロセスの方にも比重を置いたほうが、成果は見込めます。
たとえば、イスラエルと関わる際、まず、共同研究しようというアプローチがあります。共同研究自体は意義があるものです。ただ、共同研究単独ですと、どうしても、後者の 2、3 と一連のプロセス自体へ巻き込みにくいです。巻き込む際に、設計し直さなければならなくなり、スピードが落ちます。仮に、Lab を作るのであれば、ビジネスユニットと連結させます。ビジネスユニットと連結していない場合、Lab 自体のイノベーション生成スピードは速く「よいイノベーション」であったとしても、イノベーションからビジネス化まで距離が遠いと、どうしてもスピードが落ちます。イノベーション自体が2 ,3 のプロセスで価値を発揮できるかどうかを検討しないといけないからです。Lab そのものを否定しているのではないですし、儲かりそうなイノベーションばかり集めようといっているわけでもありません。最終的な目的が 3 であれば、イノベーション活動を行う Lab は、ビジネスユニット(事業部門)等と連結させ、ビジネス化していく場合の方が、プロセス全体が「速く」進みます。
どれだけ革新的なイノベーションでも、必ずしもいいビジネスを生み出すことには直結しません。世界一・世界初のイノベーションであっても、収益を生むとは限りません。いかにイノベーションが「ビジネス化(収益につなげていくか)」の視点がなければ、意味がないと認識しつつ、必要以上にビジネス化に引っ張られないバランス感覚が必要でしょう。