イノベーションへのアクセスを効果的に進める「目利き」

第三章 イノベーションをどうビジネスにつなげていくのか

3–2. 各領域最前線のキャッチアップ、最先端のイノベーションへのアクセス」により、イノベーションをビジネス化していくための必要な要素を集める環境が揃いました。このプロセスの本質は、ただの情報収集ではなく、「変化を察知し変化速度に応じて、イノベーションを事業化へ繋げる確率を高めること」が本懐です。そのため工夫が必要です。さて、どういう工夫が必要なのかです。イノベーションの芽は 1 つでも多いほうがいいです。

ただ、何でもかんでも集めればいいというわけにはいきません。そうなると、1 つ 1 つのイノベーションの「芽」が、自社に影響しそうかの判断を速めるための指標が必要となります。イノベーションのアクセス時に「これとは関わる」「これとは関わらない」という視点ではなく、すべて雑多な情報を均等な強度で収集するようなことをすると、組織として無駄な時間を膨大に費やすことになります。その後、取捨選択せざるを得なくなるからです。「どう」判断するかは、「速度」も求められます。そのためには、目利きが必要で、2 つのアプローチがあります。

■まず、内…社内ニーズからの目利き
社外の変化が速いように、社内ニーズも変化が速いです。某日系メーカの場合は、社外と提携を担当する最前線の担当者が、3 か月ごとに変遷する社内ニーズを常に持ち合わせています。社外変化へ対応するために、社内ニーズの変化を言語化し、最前線へ共有できることで、自社が何を必要かがわかります。これは結果として、社外イノベーションの判断(目利き)のスピードを上げ、アクセスする量を増やします。目利きは、「質」を見極めることと以上に、「速度」を速めます。

目利きの際、念頭に置くことは、用途目線で外部のテクノロジーを見ることです。テクノロジーの本質を見るようにすることです。「必要は発明の母」で、イノベーションそのものは、興そうと思っても、テクノロジーだけで起こせるものではありません。難題、課題、強いニーズがあったときに、それに対応する解決策(ソリューション)が出てきます。正直、スタートアップ側からのプッシュだけでは、自社にフィットした用途、ニーズを満たすかどうかは気づきにくいです。スタートアップ側はそこまで、ニーズを捉えてないですし、こちらの深いニーズは知るはずがありません。既に自社のニーズと結び付けられるようなニーズであれば、すでにその会社に出会えています。

■次に、外…スタートアップシーズそのものの目利き
私たちが想像しないアプローチで活動していることがスタートアップの一番の強みです。グーグルの創業者エリック・シュミット氏曰く「いちばん恐いことは、ガレージで何かやっている奴」。私が通っていたアタッカーズビジネススクールのベンチャー事業創造講座の日本シスコシステムズの創業者松本孝利氏も、シスコシステムズのチェンバース氏が各国の代表者が集められて会議で「私たちが知らないところから現れるスタートアップが、私たちの競合である。」と教えてくれました。

私たちの「未来」の競合は、私たちの知らないところから現れます。恐れる理由は、これまでにないアプローチでテクノロジーを活用し、イノベーションを興そうとしているからです。最新の理論を活用して、イノベーションを興そうとしています。こうしたシーズをしっかり本質的に理解できる目利きも必要です。

「目利き」と言っても、「社内ニーズ」から見た目利きと「スタートアップそのものの目利き」を統合したものを「目利き」と言います。ただ、業界では、「スタートアップそのものの目利き」を指す場合が多く、その目利きだけでは、ビジネス化までの到達確率は低くなっていきます。私が「目利き」という言葉を使う場合は、両サイドの視点を含んでの「目利き」という意味です。また、「目利き」自体はゴールではなく、ビジネス化し、収益を上げることが目標です。ただ、目利きは、数多くのイノベーションを、スピーディーに判断していくためになくてはならないものです。

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