イノベーションの「節目」とビジネスの「節目」を結節させる

第六章 イスラエルとなぜ関わり続ける必要があるのか

外部のイノベーションと関わり、収益へ繋げていくことは、至難の業です。「テクノロジー同士をつなげて新たなイノベーションを創造すること」と「そのイノベーションを 100 億円、1000 億円のビジネスに繋げていくこと」を全く性質が異なることです。混在させずに考えつつも、統合、結節させていく必要があります。 (「ラボ」と「ビジネスユニット」の統合目線 )を少し紐解いて解説してまいります。

まず、イノベーションサイドです。イノベーションといってもいくつかあります。1つ目は、スタートアップが興すそのものイノベーション。2 つ目は、数多のグローバル企業がスタートアップのイノベーションにアクセスして、ビジネス化しようとしているか。公開前の情報です。ただ、この 2 つ目は当事者や価値連鎖に入っていないと掴みづらいです。マーケティングの段階になってようやく表に出てきます。3つ目は、グローバル企業が、自社で進めるイノベーションです。

外部のイノベーションへのアクセスというと、スタートアップへのアクセスだけを考えがちです。ただ、本当の大きな社会にインパクトを与えるようなことは、スタートアップだけでは起こせず、リソースを豊富にもつグローバル企業が関わっている 2 のプロセスが多くなる傾向でしょう。誰かがたどり着いた地点までしか到達できない姿勢で追随するような受け身では、まず、情報そのものへアクセスできないですし、競合はその先に行っています。

次にビジネスサイドです。ビジネス上の大きな節目はどこで起こるか。たとえば、少子高齢化、SDGs など数字に置き換わってない社会変化を、少子高齢化率、脱炭素 CO2 の排出量ゼロのように、数字に置き換えらえるかが一つのヒントになるでしょう。大きなインパクトは、数字(見える化)に置き換わっていないことが多いです。

このイノベーションサイドとビジネスサイドを結節させるためには、テクノロジーの全体感をみつつ、テクノロジー同士を統合する目線を持ち、社会を捉えます。併せて、ビジネス上の節目側からもイノベーションの芽を探すことができることが理想です。イノベーションの「節目」では、差別化できるかと、ビジネス上の「節目」では、差別化していくイノベーションで継続的に収益を上げていけるかは別の視点です。(3–7.革新的なイノベーションだけではビジネス化できない理由)でお話した通りです。

ビジネス上の節目とは、イノベーションが事業化でき、収益を生む事業になっていくか。研究当初から、ビジネスニーズに引っ張られすぎると、差別化できるようなイノベーションになりません。儲かりそうなイノベーションの芽だけを集めに行きがちで、どうしても売り上げになるかどうかを見てしまいます。そのため、「ある程度(この案配が難しい)のシーズ起点でどういうイノベーションを起こせるか」からの発想は必要です。イノベーションは、ある程度独立性を持たれないと、必要以上にビジネスサイドに引っ張られてしまい、小手先のイノベーションになってしまいます。

イスラエルには市場がありません。これは、シーズ起点で物事を考える場所に適しています。市場に近いところにいると、意識していなくても、どうしても市場のニーズに引っ張られます。それでは、イノベーションの質が低くなります。イスラエルでのイノベーションを創造していく過程では、市場がない分シーズ起点で、イノベーションの独立性をある程度担保できる利点があります。グローバル企業が R&D を置いている理由の 1 つでもあり、拠点を置く本質的な価値となっています。

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