イスラエルへの短期滞在プログラム
第四章 イスラエルのイノベーションと関わる際の勘所
「言語化、見える化、前提の活動にする」「スタンドプレーもいいが、共有できない活動は評価対象にしないことを考えたが、それだと駐在員のモチベーションが下がる」「共有できないことが多い。その場面でしか、対処できないことが多い」こうなると、駐在員のスキルセットが、CTO と同等レベルに必要となります。結果として、現地活動などは、駐在員を置かずに、外部の専門家やネットワークと連携することで、ある程度担保できる方法もあります。
課題は個人の活動を、組織として経験値をため込んでいけるかです。駐在員を置くか置かないかに関わらず、言語化しにくいところがどうしても多くなります。ただ、可能なことは全て言語化しておくべきでしょう。言語化できないことの付加価値は、高いですが、言語化できないと組織として経験値をため込むことはできません。組織として経験値をため込むことができないと、いつまでたってもその人がいないと回らない属人的な組織になりやすいことは、回避できません。なかなか難しいものです。
いざどう打開するか、いくつかアイデアがあります。1 つは、言語化しにくいことを、経験させる社内プログラムを構築する。いわゆる社内出向制度。たとえば、駐在員を置いた場合、駐在員の経験値を組織として最大値化するために、1 か月程度本社から派遣する短期駐在プログラムをつくる。今は、このご時世で難しくなっていますが、3 年間で 1 か月ごとに異なる人材を送り込むことを想定すれば、3 年間で 36 人のメンバーを派遣できます。
36人の経験を通して、属人的になりやすい会社評価、技術評価も客観的になり、多様性を構築できます。多様性のメリットは、リスクを分散できます。「イスラエルに駐在した人が辞めるとすべてやり直し」といったことの回避が可能となります。結果的に、イノベーションを継続的にかつ組織として起こせる文化の醸成につながります。現地では、サポート業務でなく、駐在員とほぼ同等の目線で活動し、イノベーション活動へ直結する活動をします。いざその場面に遭遇してみないと対処できないことは、多いことは肌身をもって感じます。個人として変化に対処できても、組織としていかに変化に対応していくかが継続的にイノベーションを取り込んでいけるかのカギであります。
個人の創造力が発揮される活動を、創造性を失わない形で組織文化にまで浸透させていくことは難儀です。いざこれをやろうとすると、駐在員には、言葉以上に相当の苦労が付きまとうかもしれません。いずれにしろ、組織制度をできるだけいじらず、組織文化を変え、個人の活動と組織でリスクをとることをどの程度連動させられるかでしょう。
日々様々な問題が発生します。現場では、「言語」「技術」「コミュニケーション」と求められるレベルは高く、経営者「経営」「技術」両視点を統合して判断する必要があります。組織として経験値を蓄積するコツとしては、できない人が来てもある程度のレベルまでできる仕組みを組織内に作っておけるかでしょう。