第四章 イスラエルのイノベーションと関わる際の勘所

経営者の時間を費やすということは、組織としてスピードが遅くなることに直結します。経営者が判断のための思考、仮説立てなどに時間を要すると決定的にスピードが落ちます。報告の形態や、時間配分などを考えると中々難しいかもしれませんが、文化として浸透させておくと、決定が速くなります。これは、経営者に問題を持ってくる側の問題でもあります。

報告自体ではなく、情報を読み解く側の時間がかかってしまう報告形態で報告が上がってくること自体にも問題があります。イノベーションをビジネス化していく際は、スピードを優先するあまり口頭だけになりがちなことも、要注意です。スピードが落ちることが起因で、本来対処を速くしないといけない問題にスピードが落ちてしまうことが一番問題です。


第四章 イスラエルのイノベーションと関わる際の勘所

コミュニケーション「術」というよりは、コミュニケーションの「ツボ」のお話をしてまいりました。そのコミュニケーション力を支えるリーダーシップが不可欠となります。イスラエル人は、リーダーシップの「塊」のような民族です。リーダーシップが、なぜ必要かと言えば、予測不可能なことが起きた時、組織として「どう」対処するかが問われ優先順位が必要となるためです。当事者意識がないと的外れな対応が増えます。

他者が関与すると不確定要素が多くなります。意志決定にスピードが必要となる場合、何を重視するか(しかもその「何を」が変化する)を決め、組織を動かしていく必要があります。そこにリーダーシップが必要となります。


第四章 イスラエルのイノベーションと関わる際の勘所

2–6.(「回避可能」な失敗の回避方法) では、「会社が失敗した後でもつき合える関係づくり」が、必要とお伝えしました。関係を構築する前から失敗のことを考えておくことが経営者の仕事でしょう実際、会社がつぶれてしまったその後も関係は続きます。現在の時代環境が抱えている問題意識、特定理論に傾注する度合い、ある領域の社会課題を解決しようとする志など、本質的な価値創造の部分でのビジョンを共有し、関係構築をしていると、失敗後も関係を続けることが可能だと思います。ここが「ツボ」でしょう。

ファイナンシャルリターンだけを重視している投資や、Fund of Fund での投資であるとここまでの関係は正直、どうしてもできにくいでしょう。「ツボ」がない関係性になりがちです。最前線の人材、スタートアップ同士は横のつながりは深いです。失敗後も付き合っていける人材かどうかは、中長期にわたりパートナーシップを構築するときに重要です。だから、コミュニケーションを重要にしたいです。


第四章 イスラエルのイノベーションと関わる際の勘所

イノベーションをビジネス化していく際には、多くの問題が起こるため、それに対処していくにあたってコミュニケーションは要です。たとえば、社内でも社外でも全く技術的背景が違う人に、自分たちの技術やコンセプトを伝える場合、「なんとなくすごい」では伝わりません。「失敗がなぜ起こるか」の原因の 1 つは、コミュニケーション「量」が不足することで、問題が起こりやすくなります。問題は起こる、問題が起こったときに、どう適切に対処するか。どう人を動かすか、どう組織を軌道修正するか。

コミュニケーションは個々人の問題のように見えますが、個々人のコミュニケーションは、組織にも波及します。最速最大の「成果」を出すことを意識した上でコミュニケーションしないと、組織とし「成果」を残せません。イノベーションをビジネス化していくプロセスでは、1 人で完結することはほぼありませんので、「組織」として、「成果」を出すコミュニケーションを意識する必要があります。


第四章 イスラエルのイノベーションと関わる際の勘所

多くの課題は「事前に整理しておくこと」と「しっかりコミュニケーションをとること」で解決できるでしょう。イスラエル人のコミュニケーションは本音で、しかも本気でぶつかってきます。彼ら自身が理解するまで、納得できるまで徹底的に議論し、決定したらスピードを持って動く、メリハリがあります。そうしたこともあり、イノベーションをビジネス化していく際は、密度の濃いコミュニケーションが必要になります。

例えば、このコロナ禍で、テレワークとテレワーク以外の切り分け、オンラインでもいいコミュニケーション、オフラインでないといけないコミュニケーションを明確化しています。コミュニケーションの「頻度」「量」自体の問題は、回数を増やす方向でオンラインでも解決はできます。一方で、オンラインでは、コミュニケーションの「質」の担保は難しい。イスラエル人は、基本 Face To Face でのコミュニケーションを好みます。


第四章 イスラエルのイノベーションと関わる際の勘所

イノベーションをどうビジネスにつなげていくかを目指す経営者は、ぜひとも技術視点を身に着けることを推奨します。結果として、経営判断が速くなり、経営視点と技術視点を持つと、スピードそのものが上がります。テクノロジー単独で判断できることは少ないため、誰かに任せるとどうしても判断が遅くなります。

前項(4–3.駐在員を置くか否かなど、本質的な問いへ対処)で、駐在員に関して求められるスキルは、大げさに言ったわけではありません。十人程度のスタートアップであれば、CEO がビジネス開発の責任者です。交渉相手はスタートアップの CEO となります。「経営視点」と「技術視点」は CXO レベルが求められる理由もこの点が大きいです。


第四章 イスラエルのイノベーションと関わる際の勘所

課題を解決する前に、「ノウハウを得れば、打開できること」「ノウハウを得ても、打開までに、時間がかかること」に分け整理します。ある程度経験すれば、対応可能なことと、人材育成や組織化など、一定( 2 年)以上の時間をかけないと打開できないものとに分けます。いざやると決めたら進むだけです。まず、イスラエルとビジネスする際に悩む「駐在員を置くか否か」。自社ですべてできないために「外部ネットワーク」をどう使うか否かです。

■駐在員を置くか否か
イノベーションをビジネス化していく際は、「テクノロジー」と「イノベーション」と「経営」に関わる課題を解決していける人が求められます。これは、駐在員であっても変わりません。駐在員は、少なくとも CTO 直轄、新規事業担当役員の決裁者と同等レベルで、技術、事業、経営目線で判断できることがスキルを持った人材が望ましいでしょう。主な理由としては、スタートアップとのミーティングで求められる主なことは下記で、こうしたスキルセットがないとそもそも相手にされません。


第四章 イスラエルのイノベーションと関わる際の勘所

◆STEP 2 イスラエルとビジネス検討段階 つづき
検討初期段階の課題はやむを得ない部分もあります。「適切な訪問先を見つけるまでの手法を把握していない」「日々生まれるスタートアップのテクノロジーが様々な領域に散在、変化しているため、分野横断しての情報収集、目利きが難しい」「技術、経営、現地評判、業界評判等、総合的見地から筋の良いスタートアップの判断が難しい」など、ある程度は失敗しながらでないと進めないフェーズでもあります。企業の選定後も課題は多いです。

「そもそも、その選定は正しいか」ではなく、「選定基準がないために、いい企業とばかり会おうとしてしまう」企業を何社も見てきました。いくらいい企業であっても、自社の目的に合致した会社でないと、次のステップに進む確率は、格段に下がります。また、協業相手との交渉において、意思決定者等の同伴や事前調整ができておらず、何のために訪問するか、目的が定まっていないなど、挙げればきりがありません。

それ以外の主なことは、「ニーズの合致したスタートアップへ適切なアプローチ、コミュニケーションができていない」「そもそも、アポが取れない」「社内説得ができない」「社内各部署との連携体制の構築できていない、連携体制を後から構築しようとするが調整がつかない」「現地目線でのコミュニケーション、言語、経営目線不足」「現地の実務経験不足」「イスラエルで効果的な活動をするためのネットワークがない」「ビジネス化まで見据えての予算化が見通せない」など多岐に渡るでしょう。


第四章 イスラエルのイノベーションと関わる際の勘所

日本企業がイスラエルとビジネスする際に、多くの課題にぶつかります。実行フェーズごとに整理してみましょう。

◆STEP 1 情報収集段階
「イスラエルと他社がビジネスを始めた」「次のシリコンバレーイスラエルに注目を始めたい」「イスラエルのセミナーへ参加して興味を持った」などから、自社でもビジネスできそうかどうかの検討に入るための材料を探す段階です。この段階で、課題らしいものは見つからなくても大丈夫でしょう。1 点、気に留め置くことは、売り込み案件に良質な案件はないですし、自社の戦略ニーズに的確に合致する案件はありません。見つかってもベストの会社か判断できません、偶々出会った会社とやろうとしてしまわないことです。

STEP 2 に向けては、イスラエルという国への不安、「そもそも安全なのか」という治安的な不安、ユダヤ人の交渉上手なイメージがあり渡り合えるか、などがあります。日本企業でよくあるパターンが、目的が定まっていないまま、「イスラエルは中東のシリコンバレー」という確認をしたがります。この確認をしに現地へ訪問していいかというお話です。2015 年ごろ、シリコンバレー駐在の S 社の方からイスラエル視察の相談を受けました。まだ、目的が定まっていないようで、「目的を見つけに行くような視察でなく、目的を定めた視察にするべきですよ」と、アドバイスしましたが、こう切り返されました。「シリコンバレーもそうであったが、実際来てみないとわからないことが多い。訪問してどういうことができそうかイメージできる、得ている情報と実態がどう違うか、そういう中でないと目的は見つけようがない。」と言われ、確かにその通りでしょう。


第三章 イノベーションをどうビジネスにつなげていくのか

3 つのプロセスについて、個別であるようで、繋がっていることについてお話してきました。さて、最後は、「 1 つでも多くイノベーションへのアクセス」があったほうがいいというお話です。現在解決できていない課題難題は、1 つのテクノジーだけでなく、テクノロジーの組み合わせが契機となっていきます。

カプセル型内視鏡」の事例を見てみましょう。口から入れる内視鏡カメラでは、「胃」以降への消化器官へのアクセスに限界があります。1981 年、イスラエル国防省の軍事技術研究機関でカメラ付きミサイルの開発に携わっていたイダン氏が、たまたま消化器内科医と出会い、議論を交わしていく中で、アイデアとしてでてきたのが、カプセル型内視鏡の発想に結びつきます。ただ、発想だけでは、実現できませんでした。着想の実現は、1990 年代に入ってからです。「 CMOS イメージセンサー」「 ASIC 無線送信機」「白色 LED 」の 3 つの新技術の登場により、実現に至ります。

Seiji (Steve) Kato

Isratech.,Inc Founder & CEO Seiji (Steve) Kato URL : http://isratech.jp/

Get the Medium app

A button that says 'Download on the App Store', and if clicked it will lead you to the iOS App store
A button that says 'Get it on, Google Play', and if clicked it will lead you to the Google Play store